ハーブのこぼれ種の移植

冬はこぼれ種の季節

冬枯れの庭は、ちょっぴり寂しいものです。雪の下でも元気な雑草ばかりが目立ち、ハーブはなりをひそめているかのように思えます。

でも、目を凝らしてよくよく観察してみると、一年草ハーブからのこぼれ種(だね)があちこちに見つかることもあります。

ボリジのこぼれ種

これはボリジのこぼれ種からの発芽。雪の下で着々と大きくなっています。

カモミールのこぼれ種

これは、ジャーマンカモミールのこぼれ種。とっても小さいです。

こぼれ種を移植しましょう

ところが、こぼれ種は、普通、なかなか思ったところには出てくれません。狭い場所に集中して発芽していたり、他のハーブが植わっているすぐそばで発芽していたり、「ここで大きくなったら、通路が通りにくくなるかも・・・・」なんていう場所ばかりです。

このままで大きくなってしまうと何かと不都合ですが、冬から春先にかけてはそんなちいさな苗を移植するにはとっても良い時期です。

まずは、こぼれ種からの発芽を見つけ出すことが先決です。去年植わっていた周囲を探してみましょう。最初は見つけることさえ出来ないかもしれません。一度種子を蒔いて発芽させたことがあると、たいてい分かるようになりますが、大きくなった時と小さい時の葉の様子がかなり違うこともよくあります。

まして、周りが雑草だらけだと、一体どれがハーブの芽で、どれが雑草の芽なのか分からないこともよくあるでしょう。根気よく探してみてください。また、アリが運んだり、雨水や風によって移動して思わぬところから出てきていることもありますので、以前植えていたところから少し範囲を広げて探すのも良いでしょう。

ボリジのこぼれ種

雑草に紛れたボリジ。左上にも小さいのが出ています。

また、土の性質によっては発芽しにくかったり、発芽しやすかったりということもあります。きちんと統計を取ったわけではありませんが、サラサラの砂地に近い感じだと、ジャーマンカモミールはこぼれ種がよく出てくるようですが、細かくてやや粘り気のある畑などではあまりこぼれ種からの発芽が見つかりません。反対にボリジの種子は砂地では発芽が悪いようですが、しっとりした土にはとてもたくさん見つかることがあります。

種類によっては移植を嫌うものもあります。たとえばボリジは大株になると、移植してもうまく活着しない場合が多いです。下の写真のような大株は移植はかなり困難です。

ボリジのこぼれ種大株

でも、小さいうちならば移植が比較的楽。出来れば本葉が一枚か二枚ぐらいで移植すると良いですが、根も少なく、株元も弱いですので注意はいっそう必要です。でも、「なるべく小さいうちに」は鉄則ですのでおぼえておいてください。地域によっては冬になる前に発芽をはじめることがあります。暖かい地域ですと、11月ぐらいからチェックしてみるのも良いでしょう。

さて、運良くこぼれ種が見つかったらすぐに掘り上げて・・・は、いけません。まずは移植先の準備を。できれば、土作りもしっかり行って、掘り上げたらそのまますぐに定植できるようにしておくのが理想です。地植えにチャレンジ・準備編も参考にしてみてください。

移植先がの準備ができたら、実際の作業に取りかかりましょう。

ボリジのこぼれ種の移植

まずはボリジを移植してみましょう。

ボリジのこぼれ種

このこぼれ種の奥にあるのはタンジーの株。どちらも今はかわいいサイズですが、成長すると株幅も60cm、高さも1メートルを越えることがあります。両方がこの場所で仲良く育つのはちょっと厳しそうですから、ボリジを移植します。

ボリジの移植

まず、スコップで周りを大きめに掘っていきます。小さく見えますが案外根は広がっているもの。出来るだけ余裕を持って掘りましょう。

ボリジの移植

周囲をぐるっと突き刺すようにスコップをいれます。

ボリジの移植

そして、慎重に掘り上げます。

ボリジの移植

そっと持ち上げてみて見ると、根は長く伸びていますが、数が少なめですので、土がぼろぼろと落ちていきます。なるべく落とさないようにして移植先へ持っていきます。

ボリジの移植

この場所へ移植します。

ボリジの移植

移植先を大きめに掘って、一度試しに入れてみます。

ボリジの移植

深すぎるようなら土を足して、浅いようならもう少し掘って高さを調節。葉の付け根が周りの土の高さと同じぐらいになるようにすると良いでしょう。

ボリジの移植

位置と高さが決まったら、そっと移植先に入れて周りに土を足していきます。

ボリジの移植 ボリジの移植

ぎゅうぎゅう押さえつける必要はありません。周囲の土もならします。

ボリジの移植

最後にしっかり水やりをして完成。

コリアンダーのこぼれ種の移植

次にコリアンダーの移植に挑戦してみます。コリアンダーも移植はやや苦手。小さいうちの移植を心がけましょう。当店の畑だと、なぜかコリアンダーはこぼれ種からの発芽は多くありません。お客様の中には、「毎年こぼれ種だけで十分すぎるほど育っています。」というかたもいらっしゃるのですが・・・。畑の性質なのでしょう。ちなみに当店の畑、ボリジはものすごく出てきます。

コリアンダーの移植

このこぼれ種は、株元と通路のマルチ用にしいてある麻布を突き破って発芽してきました。場所的にも踏んでしまうところですし、すぐ横にはこれもボリジ。きっと春、先に成長するボリジに圧倒されてしまうでしょう。

コリアンダーの移植

まずは、マルチを慎重に取り除きます。コリアンダーも株元の茎はあまり強くありませんから、丁寧に行います。

コリアンダーの移植

ボリジと同様、周りを突き刺すようにスコップを入れます。

コリアンダーの移植

周囲をぐるっと突き刺した後、ぐいっと掘り上げます。

コリアンダーの移植

手を添えてそっと取り出します。

コリアンダーの移植

ところが、この株、一つではありませんでした。

コリアンダーの移植

実はコリアンダーは、一粒の丸い殻に、二つの種子が入っているのです。そのため、こぼれ種は2つの芽が出ることが多いものです。普通は一緒に移植して、一つは間引いてしまえば良いでしょう。ただ、今回は同じところから4つの芽が出ていました。(二粒から発芽したのでしょう。)

コリアンダーの移植

せっかくですので、分けて植えることにします。ただ、コリアンダーも根の数が少なめです。丁寧に分けてやらなくてはいけません。根を傷つけないよう、そっと分けます。まずは二つに。

コリアンダーの移植

そしてそれぞれをさらに分けます。大きい株が一つと、中ぐらいのが二つ、小さいのが一つになりました。中ぐらいのと小さいのは一度ポットあげして、少し大きくしてから定植しても良さそうなぐらいです。

コリアンダーの移植

植え付けはボリジと同様ですが、分けた分、土が落ちて根にもダメージがあります。なおさら優しく植え付けます。

コリアンダーの移植

小さいこぼれ種はいっそう丁寧に。

コリアンダーの移植

しっかり水をやって出来上がりです。

移植後、注意することの一つに、春先の成長は周りの雑草の方が速いということがあります。場合によってはあっという間に雑草に周りを覆い尽くされてしまうかもしれませんので、ラベルをきちんと立てるなどして見失わないようにしましょう。

また、今回は一年草に限定して紹介しましたが、二年草や多年草も、こぼれ種が見つかればも同様に移植することができます。試してみましょう。また、処理に困るぐらい見つかることもあるでしょう。そんな時はお友達に声をかけて引き取ってもらいましょう。もちろん、「すぐに植え付けられるよう、準備してからとりにきてね!」のひとことを忘れずに。


いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。

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