このページをご覧になっている方は、きっと注意深く、丁寧に物事を進めたい人、そして事前の研究を怠らない方だと思います。せっかくハーブを育てても、うまくいかないとガッカリですよね。ハーブを育て始めたあとで「しまった!」とか、「こんなはずじゃなかったのに・・・」ということがないように目を通していただくと安心でしょう。

ハーブを初めて育てるお客様から、相談・ご質問をよくいただきますが、このページで説明しているような誤解や勘違いが多くあるように思います。残念ながら、雑誌、テレビその他の媒体でのハーブの使われ方で、イメージが先行していたりするせいかもしれません。また、販売する側で、そう思ってもらうほうが都合がいいという事情もあるのでしょう。

我々も販売する側ですが、初めて育てる方が、育て始めて「ガッカリ」ということがないように、ストレートにお伝えしたいと思います。

三つの大きな誤解

1.室内でも育つ

初心者の方で上手く育てられない原因で一番多いのが日照不足と風通しです。もともと野生のハーブを室内で栽培することは実はかなり難しいものです。また、室内のほうが病害虫の被害にもあいやすくなります(発生すると抑えにくいというのが正確かもしれません)。

香りも屋外で厳しく育てたものに比べると随分弱くなります。

当店のお客様の中でも、難しいのを承知の上であえて趣味として室内栽培に取り組まれていらっしゃる方はおられますが、特に収穫が目的の場合などは室内栽培はお勧めできません。

当店が開催しております、ハーブ・フォトコンテストの鉢植え部門でも、室内栽培のエントリーは非常に少ないことからもわかっていただけると思います。

ただ、寒さに弱い種類を、冬に室内で育てるというのは例外です。

2.寄せ植えが簡単

寄せ植えは、簡単そうに見えて実は奥が深く、上級者向きです。なかでも、好む環境が違うハーブの寄せ植えはとても難しいです。植えつけた瞬間はいいのですが、長期間育てるには向きません。栽培に慣れないうちは、単独で植えるのが管理もしやすくよく育ちます。

寄せ植え

寄せ植えは、上級者でも難しい

3.小さい鉢で可愛らしく育つ

ハーブの苗は小さいものですが、実際に植えてみると思ったより大きく育つものです。また、大きく育とうと思っている植物を小さく育てるのは盆栽と同じで難しいものです。正直、我々プロでも、大きく育てるのは簡単ですが小さい鉢で育てるのは水やりなどの点からも難しいと感じています。

なので、この3つの誤解が組み合わさった場合は非常に難しいことになります。

よく、住宅のCMなどの室内には、キッチンにちいさなハーブの寄せ植えが置いてあったりしますが、はっきり言って長く持ちません。短期間で全部使い切っておしまい・・・というのなら話は別ですが、うまく育たなかったり、徒長したり、病害虫に悩まされたりする可能性が非常に高いです。

どうしてもそうしたいのならば

もし「小さな寄せ植えでハーブを室内で楽しみたい」というのを実現したければ次のようにしてみましょう。

・鉢植えを複数作って入れ替える

ひと鉢を同じ場所で管理していると、必ず調子が悪くなります。特に日当たりや風通しの不足で徒長したり、病害虫の被害が多くなります。また、一度使った後、その環境で次の成長を待って収穫を期待するのは非常に困難です。

そのため、2つか3つの寄せ植えを作り、ローテーションしましょう。ひと鉢は室内で楽しみ、その間、残りの鉢を外で育てると良いでしょう。ただ、できるだけ大きい容器がお勧めです。これは、店舗など、どうしても室内に置きたいという事情がある場合にもお勧めです。

・組み合わせは、なるべく性質が似たもので

水分を好むミントと、ローズマリーやタイムとの組み合わせはどちらかが上手くいきません。なるべく性質が近いもの同士を組み合わせましょう。

例えば、湿り気を好む種類なら・・・ミント、バジル、レモンヴァーベナ、レモンバーム

乾燥を好む種類なら・・・ローズマリー、セイジ、タイム、オレガノ

といった具合です。

また、短期間楽しめればよいと割り切る方法もあります。「少し長くもつフレッシュハーブ」という捉え方でしょうか。でも、ハーブの楽しさはやはりすくすく育って、香り良いものを自分で収穫できることだと思います。収穫を目的にするならば、屋外で、単独で植えるか、可能なら地植えがいいでしょう。

・時々植え替えする

小さい鉢は、養分やその他必要な成分が流れ出るのも速いです。また、根詰まりも起こしやすいのでこまめに植え替え、株分けをしましょう。またその時、一部でもいいので土を新しいものに替えてやりましょう。肥料を足すよりもこちらの方が効果的です。

その他の誤解

ハーブは春からでないと育たない

数十年前、ハーブが一般に認識されはじめた頃からだと思いますが、「ハーブは春〜初夏」から育てるものと思われていることがまだまだ多いようです。

そのため、メディアでもハーブの特集が組まれたり、ハーブ関係の書籍が発行されるのは春〜初夏であることが多く、それに合わせて育苗農家も生産し、ハーブの苗が店頭に並びます。それでなおさら「ハーブは春〜初夏」と思われることが多いようです。ただ、ハーブを長く育てている人は、ハーブの種類や育てる環境に応じて、しかるべき時期から栽培をスタートしておられます。

近年ようやく、春以外の時期からもハーブを楽しむことができるという認識も広がり始めたようです。寒さに強いハーブなどはむしろ秋から育てるほうがうまくいく場合が多いです。特に、暑さに弱い種類などは近年の暑い夏をすぐ迎える春に植えるより、秋から冬植えのほうがむしろ安定して育ちます。もちろん、地域や環境にもよりますし、寒さに弱く、夏に向かって成長するバジルやレモングラスなどは暖かくなり始めた頃から育てるのがベストです。

ハーブの種類と適した植えどきについてはハーブの苗を植える時期で説明しておりますので参考にしてみてください。

ハーブは育てるのが難しい

「ハーブは育てるのが難しい」と思っている方がいらっしゃる一方で、「放っておいても育つ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。どういうことなのでしょうか。

結局のところ、育てる場所・環境に合う種類なら放っておいても育ちますし、環境がその種類に適していなければとても難しいです。たとえば、暑さに強いレモングラスは、九州南部や沖縄など暖かい地域ではとても簡単に育ちますが、北海道の北部や東部では大変苦労して育てていらっしゃる方もあります。逆に、北海道でよく知られているラベンダーの種類は、暖かい地域で育てようと思うととても大変です。

まずは幾つかの種類を育ててみて、どのような種類がうまくいくか、どのような種類が育ちにくいかをつかむのが一番確実です。ついでに言うと、ハーブも生き物ですので、育てる方との相性もあったりします。

また、すでに野菜を育てておられるかたから「ハーブを育てるのは難しいのでは?」という言葉を聞くとびっくりします。きっと両方を育てたことがあるかたはわかると思いますが、時期やタイミングが微妙な野菜に比べるとハーブはずいぶん育てやすいものです。

野菜を育てる自信があるかたは、ハーブはきっと簡単に育てられるでしょう。

肥料なしで育つ

畑など、すでにしっかりした土ができている場所なら肥料なし、追肥なしもで育てることもできますが、まったく新しい土を入れた畑だったり、容器栽培、特に葉をたくさん収穫したいという目的があるような場合は肥料が必要です。

虫がつかない、病気にならない

適切な環境で、健全に育てれば、野菜や一般の草花に比べるとハーブは病害虫の心配が少ないのは事実です。ただ、日当たりや風通しが不足したり、水や肥料の与え過ぎなどで害虫が発生することはあります。病気も同様です。むしろ、どうしてそうなったのかを考え、いろいろ対策してみるということが、園芸の楽しさでもあり、植物を上手に育てるよい経験になります。

土がアルカリ性でないと育たない。酸性の土では育たない

よく知られているハーブが地中海沿岸地域が原産であることから、「アルカリ性の土にしましょう、酸性の土では育ちません」と、ハーブが日本に紹介された頃に繰り返し言われていました。そのため、どんなハーブでもアルカリ性にするべきだという誤解が深く定着してしまったようです。

おそらく、育ててみるとわかるのですが、必ずしもアルカリ性でなくても、中性や弱酸性の土でもよく育ちます。

例えば、ほうれん草はアルカリ性を好みます。ほうれん草を育てたことがある方は土をアルカリ性にしないとよく育たないことをご存知だと思います。ただ、ハーブの場合はほうれん草のように育たなくなることはありません。比較的アルカリ性を好むと言われるラベンダーでも、そこそこの酸性用土でも結構育ちます。

酸性、アルカリ性にこだわるよりは、むしろ水はけや風通しの方に注意すると良いでしょう。

もちろん、原産地がアルカリ性土壌のものばかりではありません。酸性土壌を好むハーブも結構あります。

意外な出来事に出会うのも園芸の楽しみ

育ててみると、予想もしなかったことや、意外なことが起こるのが園芸です。そして、生き物や自然の不思議な力やはたらきに出会えるのもまた園芸の楽しみです。「えっ!そうだったの!!」という驚きに出会う機会を楽しめるひとは、園芸もはやく上達するに違いありません。


いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。

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