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ローズマリー掘り上げ

地植えで大きく育った株を移植したい

大きく育ったローズマリーやラベンダーを移植したいのだけれど・・・という質問をよくいただきます。

リリーズブルーローズマリー

上の写真は、植えて5年以上にはなるリリーズブルーローズマリーです。もともと、ここは比較的日当たり良い場所でしたが、南側にあたる場所のギンヨウボダイジュが急激に大きくなってしまったため、春から秋の落葉シーズンまでは日中も影になるようになってしまいました。

リリーズブルーローズマリー

横に倒れるように伸び、日当たりも悪いので枝が柔らかく育つようになった

もともとリリーズブルーローズマリーは、綺麗に上に伸びる種類なので、はじめは直立していましたたが日差しを求めてどんどん北側に枝を伸ばすようになり、今ではこのように斜めに。枝も柔らかくなってなおさら横に倒れやすくなってしまいました。そうなることを想定して植えれれば良いのですが、他の植物が成長したために、場所を移動させないといけなくなることはよくあります。

ほかにも、隣地に建物が建って日陰の場所ができてしまったようなケースもあるでしょう。

今回は、こういったローズマリーをどのようにすれば安全に移植できるかを学んでみましょう。ラベンダーもほぼ同様に行えます。

移植が難しい理由

ローズマリーやラベンダーは小さいうちは移植もそれほど難しくありませんが、3年ぐらいたってくると、徐々に移植を嫌うようになってきます。

その理由は、太い根が増えてきて細い根が徐々に減ってくるため、移植した後にうまく根付かないことが主な要因です。また、大きくなった株を支えるために、地中深くに向けて太い根を伸ばすのできちんと掘りあげるのが年々難しくなってくるからです。

そのため、大きな庭木などを移植する際のように事前に根回しという作業を行って、新しくて細い根を伸ばしておいた上で移植するのが理想的です。

ただ、今回は時間的に余裕がないため、根回しを行わず、強い剪定をして移植後の根の負担を減らして活着を促します。

ちなみに、ローズマリーも、植えて1,2年で膝丈ぐらいまでのサイズならば移植は難しくありません。また、何年か経っていても、鉢植えのローズマリーを地植えにする場合は、あまり心配しなくてもよいでしょう(ちなみに、逆はとても難しいです)。

別の方法

また、最初にこう言ってしまうと身も蓋もありませんが、枯れるかもしれない大きなリスクを冒してまで無理に移植するよりも、あらかじめ挿し木などで新しい株を育てて、株を更新する方が現実的です。植物にも寿命があります。ローズマリーの場合は苗からおおよそ5~10年でピークを迎え、その後は老化するスピードも速くなります。潔く諦めるのも一つの方法です。

移植の時期

さて、大きく育ったハーブを移植するには時期も大切です。できれば休眠期を狙って行うのが良いとされます。もちろん種類によって異なります。

ラベンダーのように冬が休眠期にあたる場合は、気温も低く病害虫の心配も少ないので安心ですが、ローズマリーの場合は秋から春先に掛けて開花期を迎えます。そのため、この季節がベストとは言いにくいのですが、急激に伸びる季節でもなく、またコガネムシの幼虫など、定植後に根を食害するような昆虫も活動していないということからまだましな時期と言えるでしょう。

一般的には秋から冬の終わりまで。夏は避けましょう。できれば花がない時期(開花前よりは花が終わってから)のほうがよいでしょう。

移植先の準備

大きめの穴

株を掘り上げてから慌てて場所を探さないよう、あらかじめ移植先を準備しておきましょう

まずは、あらかじめ移植する先に移植用の穴をほっておきます。余裕を持って大きめの方がいいでしょう。うまく根付かせるため肥料を入れるというのはむしろ逆効果です。肥料を与えるのは株がきちんと活着して、成長を始めたのを確認してからぐらいの方が安心です。そのため、特に土壌改良をしたり肥料を入れたりは行いません。水はけが悪い場所ならば、パーライトなど水はけを促進する改良素材を加る程度は良いでしょう。

強剪定

次に、強く剪定を行います。作業をやりやすくするためと、根の負担を減らすためです。

目安の支柱

今回はわかりやすいよう支柱を立てて、最終的な株幅の目安をつけておきます。一般に根は、地上部と同じ(またはそれ以上)の範囲に広がっているものです。もちろん、できるだけたくさんの根と土をつけて移植するのが理想的ですが、人の力だけで動かそうとすると限界があります。

そのため、今回は株幅が半分になるぐらいのところまで剪定して、掘り上げも同じような位置で行うことにします。

株元の芽

株元に近い新芽。この芽の上までなら剪定できます

ローズマリー(ラベンダーもですが)、完全に葉を無くすまで強く剪定してしまうと、そのまま葉が出ずに枯れてしまうことがあります。必ず少しでも葉を残すようにしましょう。株元近くに芽が確認できればその上まで剪定することができます。

枝の剪定

どんどん剪定していきます

ローズマリー剪定 ローズマリー剪定

上に伸びた枝も思い切り刈り込みます。かなり枝を減らしました。

ローズマリー剪定

古い枝、明らかに枯れている枝、勢いのない枝は思い切って元から剪定します。

ローズマリー剪定

かなり強く剪定して枝を減らしました。もっと小さい株ならここまで剪定しなくても大丈夫です。

ローズマリー剪定

目標のサイズにおおよそ近づきました。

掘り上げ

ローズマリー掘り上げ

さて、いよいよ掘り上げ作業です。枝も少なくなって作業がしやすくなったら、周囲を掘ります。根をスパッと切るようにスコップを垂直に刺し、周囲をぐるっと掘っていきます。

ローズマリー掘り上げ

横に伸びた根を切るようなイメージで行いましょう。よく切れるスコップを使うのがポイントです。スコップを倒して土を掘りあげるのはまだです。

ローズマリー掘り上げ

一周掘れました。

一周したら少し斜めからもスコップを刺して下の方の根も切ります。ここは焦らずに丁寧に行うことが大事です。

ローズマリー掘り上げ

斜めから深くスコップを刺します

ローズマリー掘り上げ

株の下の方までスコップが届くようになったら、スコップをゆっくり倒してよいしょと持ち上げます。腰をいためないよう、テコの原理で。

ローズマリー掘り上げ

中央上のあたりの太い根は支える力は強くても水や養分を吸う力は弱めです。

思ったより細かい根が残っていました。古い株になればなるほどこういう根が少なくなってきます。

このとき根をチェックして、ちぎれたり、折れたりしている根があったらよく切れる刃物で切り戻しておくようにしましょう。

移動する時に土が落ちないよう、下に布を敷きます。今回は大きな麻袋があったのでこれを使いました。

当て布

赤ちゃんのお尻の下におむつを敷く感じでしょうか

株の向きを変えながら、根が全部乗るようにします。

当て布

移植先は十数メートル先なので、2人がかりで麻袋の両端を持って運びました。小さいように見えますが、土の重さで二人がかりでもちょっと大変です。

当て布

定植

あらかじめ掘っておいた穴に入れて高さを調整します。しっかり掘っておいたので、少し深かったようです。

調整

下に布を敷いておくと入れたり出したりの作業が楽ですし根の負担も少ないです

調整

水をやって土が締まると沈みますのでもともとの地面の高さよりも気持ち高目ぐらいになるほうがが良いでしょう。穴の底に土を加えて調整します。

土をかぶせる

高さが決まったら周囲に土を加えていきます。麻袋はいずれ分解して土に戻りますのでそのまま一緒に埋めます。

水決め

土手の中に水を貯めて土をなじませる「水決め」という方法で水やりをします。樹木やバラなどを定植する時によく使われる方法です。ネットにもよく紹介されているので検索してみると細かい方法がわかるでしょう。

まずは余った土で株の周囲に土手を作ります。周囲に大きなドーナツを作る感じです。

土手

土手の内側は水が漏れないよう叩いて固めます

次に、土手の中に何回かに分けてたっぷりと水を与えます。水が溜まるよう、ジョウロなどではなくてバケツで流し込みます。

水決め

水が溜まったところで周囲何箇所かにに支柱を抜き差しして、土の中に残った空気を抜くようにします。

空気を抜く

ここは水はけが良いところなので、おおよそ30リットルの水を使いました。グラグラするようなら必要に応じて支柱を立ててやると良いでしょう。

完成

無事終了。あとは根付いて新しい成長が始まるのを静かに見守ります。

ローズマリーの花

剪定し残していた枝先にまだ花が残っていました。

移植をしやすくするために

たとえば、数年内に転勤があるなど、あらかじめ移植する必要が分かっている場合は、その時になって慌てないよう、移植をしやすい体勢を整えておくと良いでしょう。

基本的には、まず、こまめに剪定をして株をコンパクトに保つこと。これは、新しい枝を出して株を老化させないためにも有効です。

また、時々根を切ること。「掘り上げ」の作業で行ったように、スコップを垂直に株の周りに刺していき、根を切ります。剪定時に行うと株の負担が軽減されるのでなおおすすめです。

移植しにくいハーブと移植しやすいハーブ

大きくなったハーブは全てが移植が難しいというわけではありません。種類によって移植を嫌うもの、そうでないものがあります。

まず、短期間に大きくそだつ一年草はある程度大きくなってくると移植はしないほうが良いでしょう。ジャーマンカモミールやボリジ、ディル、コリアンダーなどがこれにあたります。一方、きちんと剪定すれば、バジルは移植してもあまり影響がありません。

次に、一般的に、セリ科の植物は移植は苦手なものが多いです。イタリアンパセリや、ロベッジ、アンゼリカなどです。これらも太い根が多いため、移植するとうまく活着しないことがあります。とはいえ、フェンネルはもともと強健なので、移植しても案外大丈夫なことが多いです。

また、ミントやレモンバームのような、細かい根が出るハーブ、地下茎がよく伸びるハーブは移植は容易です。むしろ根詰まり防止のために積極的に移植するぐらいが良いでしょう。同じシソ科でも、タイムやセイジのように木質化しやすい種類になるに従って移植が難しくなってきます。今回学んだように、なるべく根を傷めないように大きめに掘り上げて移植すると安心です。

まとめ

慣れないうちは、詰めて植え過ぎたりして移植せざるを得ないことが出てくると思います。

ハーブの種類や季節によっても移植のしやすさ、しにくさは違ってきますが、根を切って場所を移動するということは、ハーブにとっては大きな負担となります。

ただ、「どうしよう」と、迷って時を過ごすよりは適切な時期に思い切って行う方が良い結果が待っていることが多いでしょう。

機会を改めて、根回しをして移植する方法も紹介できればと思っています。


いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。

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