見つけにくい害虫
コガネムシは慣れないと被害に気づきにくい害虫です。夏、「水をいくら与えてもすぐにしんなりとしてしまうけれど、なぜなのか原因がわからない・・・。」というお悩みで当店に質問をいただいて、コガネムシの幼虫の被害に気づく方が毎年のようにいらっしゃいます。
アブラムシや毛虫、イモムシ類、ナメクジなど、ハーブに被害を与える害虫はたくさんいますが、多くは地上部にいて目で見つけやすく、被害の原因もつかみやすいのですが、コガネムシの幼虫は土の中にいて見えにくいために、被害に気づくのが遅くなりがちです。
「なんか調子悪いな・・・、暑さのせいかな?水やりがたらなかったのかな?」と思っているうちにどんどん調子が悪くなり、原因がわかった時には相当被害が進んでいた。そういう被害をもたらすのがコガネムシの幼虫です。
幼虫と違い、コガネムシの成虫は葉や花を食害しますので、比較的見つけやすいと思います。ただ、ハーブの場合、成虫による被害は幼虫による被害に比べるとそれほど大きくありません。
過度の心配は不要
このように言うと、とても心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、ハーブを育てると必ず被害に遭うと言うわけではありません。そもそも、地域によってはコガネムシの被害がほとんどないところもあるようですので、必ずしも恐れる必要はないと思います。そういう点では、「初心者のためのハーブ講座」で紹介するのは適切ではないかもしれません。ただ、一旦被害をうけると被害が大きいので、ハーブの調子が悪い時に、「もしかしたら・・・」と少しでも早く気づくきっかけになっていただければ幸いです。
地域や植物による被害の差
寒冷地では、そもそも被害にあったこともないといわれる方も多い一方、関東以西の暖地では初夏から秋にかけて被害が目立ちます。
特にバラを栽培している方は、コガネムシの被害には結構頭を悩ませておられるようです。ハーブの仲間ではラベンダーやローズマリーが被害にあうとかなりダメージが大きく、最悪枯れてしまうこともあります。
一方でミントやバジルなどのように細い根がたくさん出る丈夫なハーブの場合は、少々食べられてもなんとか耐えることが多く、植え替えれば十分復活してくれます。
実際の被害
飛来してきたコガネムシの成虫が株元で産卵して、孵化した幼虫が土の中で根を食害します。
幼虫が鉢の中で活動すると、土が軟らかくなってきます。
また、土が細かくなって鉢から落ちやすくなり、土の量が減ってきます。
コガネムシは特に細い根を集中して食害するため、株に勢いがなくなり、食害が進むと水を与えてもすぐにしんなりしてしまうようになります。
一方、毎年被害にあうと言われる方もいれば、昨年被害にあったが、今年は大丈夫だったというようなこともあるようです。
特に、良質の有機質が入っている良い土ほどコガネムシがやってくる傾向が強いようで、なおさら悩みの種です。また、夜、コガネムシの成虫がやって来やすい光がある場所や、近くに山林がある場所は被害に遭いやすいようです。
鉢植えでの対策
鉢植えの場合は、株元を市販の被覆材で覆う(「コガネムシ 不織布」などのキーワードで検索してみてください)方法が効果があるようですが、土の様子が見えなくなるので、初心者にとっては土の乾き具合が分かりづらくなるデメリットもあります。
また、市販品でなくても、自分で不織布や網戸のネットを切って鉢に合わせて自作しておられる方もいらっしゃるようです。
そのほか、ハーブの種類によっては難しいですが、柔らかくて有機質たっぷりの土ではなく、硬くてザラザラした土には産卵しにくいようですので、土の上部にそういった硬めの用土を用いることも有効です。
もちろん、こういった被覆材を使う場合は、鉢の中に幼虫がいないことを確認してから行うのが大事です。冬に行う鉢の植え替え(その1)などの際にあわせて作業をすると良いでしょう。
早期発見と対処
発見のポイント
次のような兆候が見られたら、コガネムシの幼虫の食害を疑ってみると良いでしょう。
- いくら水を与えてもすぐにしんなりする
- 普段は固い土が、急にふかふかし始める
- 鉢に生えていた雑草が急に枯れ始める
- 鉢底から細かい土が落ち、土の量が減ってくる
被害を見つけたら植え替えは少しでも早く
小さい鉢の場合は数匹でも根を食い尽くしてしまうことがあり、株が大きなダメージを受けることがあります。被害を見つけたら、はやめに株を鉢から出して丁寧に幼虫を取り除き、新しい土で植え替えましょう。
幼虫も大きくなるに従って食害のスピードが速まります。もし植え替えに適していない季節であったとしても、一刻も早く植え替えを行って幼虫を取り除くことが大事です。
実際の植え替えは、冬に行う鉢の植え替え(その2)と同様に、地上部を剪定して株の負担を減らして植え替える必要があります。場合によっては、かなり強めに剪定しなければいけないこともあります。
また、真夏など、植え替えに適していない季節の場合は、作業後は日陰で養生してやるなど、かなり丁寧なケアが必要となります。
その他
コガネムシの食害を受けた鉢の土ですが、きちんとコガネムシを取り除いたあとは、良質の培養土として使うことができるようです。
実際、何人かのお客様から、この土で育てると非常に良く育つという報告もいただいております。興味がある方はお試しください。
次回、コガネムシ対策(その2)・地植えや花壇での対策では、地植えや、花壇で発生した場合の対処方法や実際の作業の様子などもご紹介いたします。お楽しみに。
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。