ワイルドストロベリー

初心者でも育てやすく、花も実も楽しめ、葉もお茶にできるなど、活用範囲の広いワイルドストロベリーは、初めてハーブを育てる方にも人気のハーブです。

ストロベリーの花

白い花と赤い実が特徴のワイルドストロベリー。白い実の種類もあります

しばらく育てていると・・・

そんなワイルドストロベリーを育てはじめて、まず最初に「あれ??どうしよう」と思うのが、ワイルドストロベリーのランナーです。

ストロベリーのランナーと子株

すでに苗の時期にランナーや子株がつくこともある

ストロベリーのランナーと子株

ランナーの先にできはじめた子株

時期にもよりますが、育ち始めてしばらくすると株元から柔らかい茎のようなものが横にのびてきて、あれよあれよという間に鉢の外にまで伸びてきます。そのうち、先っぽに小さな葉っぱのようなものが出てきます。調子が良いと、一株から何本ものランナーがでることも珍しくありません。

プランターに植えたストロベリーのランナーと子株

プランターに数株植えて1年後のストロベリー。たくさんのランナーと子株ができている

これをどうしたら良いのでしょうかというご質問をよくいただきます。切った方が良いのか、そのままで良いのか、最初は迷ってしまうことでしょう。

伸びてくる茎の正体

この、伸びてくる茎のようなものは、「ランナー」といいます。そして、さらにその先には子株ができてきます。 ストロベリーは、種子でも増えますが、この子株が、土に根を張って新しい株として育つことで、育つ範囲を徐々に広げるのです。

ストロベリー

とあるお庭。最初に植えた数株のホワイトワイルドストロベリーがランナーでこんなに増えた

種類によるワイルドストロベリーの増やし方

ちなみに、ストロベリーにはいろいろな種類があって、ランナーが出る種類と、ランナーが出ない種類があります。 当店で扱っている種類ですとランナーが出る種類はワイルドストロベリーと、ホワイトワイルドストロベリーです。その他の種類(ルーゲンストロベリーアレキサンドリアストロベリーなど)はランナーが出ないので、おもに株分けで増やします。

ランナーが伸びる季節

また、ランナーが出る時期はおおよそ春の開花、結実が終わってしばらくしてからです。大抵5月から7月ぐらいが多いですが、調子が良いと秋にもランナーが伸びてくることがありますので、その時をねらって増やすようにすると良いでしょう。

ランナーを利用したストロベリーの増やし方

子株

ランナーにできはじめた子株。まだ小さいのでもう少し待ってもよい

子株

子株もだいぶしっかりしてきて下の方に根のようなものも見えてきている

子株の根

すでに根が出てきた子株。これぐらいになるとすぐに根付きやすい

ランナーの先に子株ができ始めたら、子株の下がしっかりしてくるのを待ちましょう。場合によっては根のようなものも見えてくるかもしれません。そうしたら、子株の下の部分を土に埋めます。

子株

おおよそ点線より下が土に埋まるように

大きな鉢やプランターの場合は、鉢の隅などに子株を軽く埋めておくだけでも良いでしょう。季節や環境にもよりますが、そのまま2、3週間置いておくと子株からしっかりと根が出てきますので、周りの土ごと掘り上げて他の鉢などに植えなおすと良いでしょう。

子株

鉢の空いたスペースに埋めておく

また、ランナーの長さが十分にある場合は最初から小さい鉢や育苗ポットなどに子株を軽く埋めて発根させることもできます。いずれの場合でも、あまり深く埋めすぎずに葉の部分は土から出るようにしておくと良いでしょう。

子株

子株も十分なサイズの場合は直接鉢に。

子株 子株

育苗ポットでもよい

子株

少し埋めすぎた例

埋めた後は、少し多めに水やりをして、極端に乾かないようにしましょう。また、大事なのは下記のように、根が出てくるまではランナーは切らないようにすることです。

根が出てきてから親株からのランナーを切る

根が出て自分で水分や栄養分を吸収できるようになるまでは、親株から水分や栄養分を受け取っています。人間でいう親からの仕送りのようなものですね。独り立ちできるまでは、ランナーは残しておきましょう。

ランナーを切る目安は、子株の葉に成長が見られるようになってきたころです。軽く株やランナーを引っ張ってみましょう。引っ張った時に抵抗を感じられるようなら、根付いている証拠ですので親株から切り離しても大丈夫です。

子株

引っ張ってみて抵抗を感じるようなら、そろそろ独り立ち

子株

ランナーから切り離しても大丈夫

子株

無事独り立ちできた子株たち

ストロベリーは時々株の更新を

どんな植物でも株は徐々に老化してきます。ストロベリーも株が老化してくると花や実のつきが悪くなったり、いずれは勢いが弱くなり、枯れてきます。そのため、前もって若い株を育てていき、徐々に更新していくと長く楽しめます。鉢植えの場合は特に子株をきちんと育てて古い株と入れ替えるようにすると良いでしょう。ランナーが出ない種類も株分けをしたり、植え替えすることで株の老化を防ぐようにするのがおすすめです。

地植えの場合は、ランナーが出ることで自然に新しい株が周りにできて株が更新されます。一年もするとどれが親株だったかもわからなくなるぐらいです。

一般のランナーのあるイチゴ(主に実を収穫する品種)の場合は、親株からでてきた子株よりも、子株から更に出てきた孫株を大事に育てると良いと良く言われますが、ワイルドストロベリーの場合は、子株でも特に問題ありませんので、そのまま育てても大丈夫です。

ストロベリーポットでワイルドストロベリーを育てる

ストロベリーポット

ストロベリーポットでストロベリーを育てる

ストロベリーポットと呼ばれる容器があります。縦長のテラコッタ(近年は軽量なプラスチックのものもあります)の鉢で、鉢の上と胴回りに苗を植えるポケットが付いた鉢です。ずいぶん昔、この鉢のポケットそれぞれにいろいろなハーブを植えて楽しむというのがはやったことがありましたが、名前の通り、本来はストロベリーのランナーを出して子株をつけるという特性を活かして楽しむ鉢です。

まずは、ストロベリーポットに土を満たし、一番上の口(植える場所)にストロベリーを植えます。

ストロベリーポット

最初はこれだけですので少し寂しいですが、根付いてくると徐々にランナーが伸びてきます。

ストロベリーポット

一月半後。株がしっかりしてきたらランナーが出はじめる

子株

ランナーの先に子株がはっきりとでき始めたら、上の方のポケットに子株の株元を植え込みます。

子株

差し込んだだけですと水やりしたり、強い風が吹いた時に外れてしまうことがありますので、小さな針金のようなものでU字型のフックを作ってランナーの先を埋めるようにすると良いでしょう。

フックフック

しばらくするとこの子株も根付いて、この子株からまたランナーが出てきますので、その先にできる孫株を更に下や横のポケットに植え込んでいきます。

ストロベリーポット

これを繰り返すと、全てのポケットにストロベリーが育ってきます。

ストロベリーポット

完成(約半年後)

もちろん、最初の株は徐々に古くなってくるので、時々子株(孫株)を一番上の枠に戻して更新を図ると良いでしょう。また、周囲ぐるりとポケットがありますので、同じ方向からばかり日が当たらないよう、時々回転させてやるとバランス良く育ちます。

ストロベリーポット

新しい株を一番上に植えて株の更新

ランナーが出ないタイプのストロベリーの株分(2022年4月追記)

ランナーが出ないタイプのストロベリーについて鳥取県のK様より下記のご質問(抜粋)をいただきました。

Q:昨年、レッドワンダーストロベリーとルーゲンストロベリーを貴ショップで購入させて頂きましたKと申します。
今回、これらのイチゴのメンテナンスについて教えて頂きたくご連絡させて頂きました。
添付した写真をご覧ください。 今年も何回か積雪がありましたが、雪よけで対応して無事に冬を乗り越えることができ、花もたくさんつき出した状況です。
ここで、教えて頂きたいのですが、このような状態で今年も放置して良いのか?あるいは株分などをした方が良いのか?もし株分けする必要の場合、その方法を教えて頂けないでしょうか?ご存知のようにランナーが出ないタイプなので増やし方がわかりません。
また、株を弱らせないために植え替えをした方が良いかも合わせて教えて頂けましたら幸いです。
ストロベリー

そこで、

A:今とてもいい状態ですので、是非この状態を長く保ちたいものです。
植え替えだけ行っても良いですが、株分けをする事でなおさら株に刺激を与えることができます。
もし可能なら、別の場所に移植する事で連作障害を防ぐこともできます。
時期としては、結実が終わって半月〜一月ぐらい後、または秋になってからならばより安心です。
複数株ありますので、全て行わず、バックアップとして残しておいてそれは秋に行うと尚安心と思います。

とお答えして、当店の畑を見てみると、同様のランナーが出ないストロベリーのひとつ、レッドワンダーストロベリーの株を見つけました。

ストロベリー

およそ3年前ぐらいに植えて昨年ぐらいまではいい調子でしたが、まさに悪い見本のように株が老化しています。ここまで放っておくと花つきも悪く、果実も数が減ってきます。徐々に勢いも衰えてきて株分けや植え替えも難易度が上がりますから、こうなる前に早めに株分けや移植を行うように気をつけましょう。

ストロベリー

老化したランナーなしストロベリーは株元が硬くなり、先から葉がつくようになります

また、花が咲き出しているので、植え替えや株分けにベストな状態とは言えませんが、このまま夏を越させるよりはましなので思い切って株分け、植え替えをしてみます。

ストロベリー

まずはざっと株を掘り上げます。

ストロベリー

少しずつ株をほぐして、分けていきます。今回、根の状態がわかりやすいように少し土を落とし気味ですが、可能ならばできるだけ根を傷めないように、土を落とさないようにすると活着も良いでしょう。 今回は手で分けられるところだけ分けていきましたが、手で分けにくい場合はハサミなどを使うと根を傷めにくいです。

ストロベリー

左が古い株、右が比較的新しい株

株の端の方には少しだけ新しい株ができていました。この新しい株と古い株の根の状態を比較していただくと違いがわかりやすいと思います。

新しい株の方は、白くて細い新しい根がたくさん出ています。しかも、根が出ている場所と葉が出ている場所がすぐ近くです。葉の勢いも違う感じですね。

でも、古い株の方は、根の部分と葉の部分の間がずいぶん空いています。根の数も少ないですし、黒くて硬い根しかありません。これでは移植しても根付きにくいです。

おそらく、上記のK様の株の状態だと、掘り上げても右のような新しい健康な株ばかりだと思われます。まだこういった老化しないうちに植え替えや株分けをしておくのが大事です。

ストロベリー

とりあえず、株が元からあった周囲を耕して、腐葉土を多めに混ぜました。本当は場所も別のところに移動した方が連作障害を防ぐ意味からもベストなのですが、今回は新しい土(腐葉土)を加えるだけです。それでも、植え替えないよりはずいぶんましだとおもいます。

ストロベリー

ここに株分けしたものを適当な間隔を開けて植えていきます(場所の関係で少し間が狭めです)。可能ならば30センチ以上空けることができると尚良いでしょう。 雨が本降りになってきたので、剪定ができませんでしたが、本当は少し葉を剪定した方が根の負担を減らして活着もしやすくなります。

あとは、活着するのを待ちましょう。今年は花や果実は期待できませんが、株のアンチエイジングをして長生きさせるという目的ですので仕方がないでしょう。


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